教訓 風通しのよい人になれ(2007年5月)


 今月のお勧めは近藤信緒著『人に好かれる法』(ダイヤモンド社 1300円)である。60年前に50万部売れたベストセラーの復刊。近藤さんの本名は池田敏子。池田書店(輸出分も含め450万部売れた『性生活の知恵』などのベストセラーで知られる)の創業者である。

 敗戦直後に次のように清々しいことがえいる女性が日本にいたのだ!

 「自分のよさのわからない人間、そういう人間が無邪気に振る舞っているくらい見事なものはない。(中略)あまり人間の長所や短所を気にかけすぎてはいけない」

 心理学者なら逆に「自分の長所と短所を認識せよ」と説くはず。が、それではまっとうなだけで面白みのない人間ができそう。

 近藤さんは風通しのよい人間になれ、と言う。例えるなら、司馬遼太郎氏が『竜馬が行く』で描いた坂本竜馬のような好かれ方がよい、と。

 「人と仲よくすること、人を愛することにも非常に能力のあるなしがあると思う。(中略)真にその愛に生き抜くことは、世の立身成功者と同様のすぐれた人たちだと思う」

 愛ある人生を生きた人は、大臣や財界の名士に匹敵する成功者である、と。

 管理職にはこの教え――。

 「(部下は)これが正しいと信ずればこそ、生命を投げ出しても働くことができるのだ。(中略)いかなる命令にも大義名分を明らかにして部下が堂々と正々の陣を張って戦えるよう、肚で練った命令が出されたいものである」

 日本の管理職は責任を回避した命令を出し過ぎ。そういう職場では無気力が増える。

 逆に、ワンマン社長は社員を頑張らせ過ぎる。その場合はこの教えが効く。

 「張り切った弦は切れやすく、湧く水でないととぎれる。努力は過ぎると、公平を欠いて、かえって反感を呼び、敵を作る」

 一見矛盾するような二つの教えだが、結局「人を見るの明」があるかないかが分岐点という。

 歯に衣着せないで、なおかつモノを売る術を知る人の言葉は、胸の奥で響く。