教訓 頭でなく身体で考えるべし(2007年7月)


 最近講演に「声に変化を付ける発声」「表情筋のストレッチ」「立ち姿・歩き方」などの実技メニューを加えている。いずれも演劇で培ったノウハウである。

 何故こんなことをはじめたのか。大多数の人は、非言語コミュニケーションの大切さをわかっている。だが頭でわかっているだけで、身体でわかっていないのである。

 参加者の皆さんに実際にやって貰うと、自分が持っているイメージと、他者から見えるイメージが大幅にずれていることに驚く。

 自分の喋り方が、表情が、立ち居振る舞いが、相手にどういう印象を与えているか、これまで全く考えてこなかったという人がたくさんいる。昔はシツケというのがあったが、最近の日本ではうるさくいわなくなっから、当然といえば当然か。

 しかし事態は深刻。私一人ではとても手に負えない。そこでお勧めなのが、
森田雄三/監修 朝山実/文『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP社)。一人芝居で有名なイッセー尾形氏と、彼の演出家である森田氏が、ズブの素人を4日で舞台にあげるというワークショップをあちこちでやっており、同書はその模様をルポしたもの。

 例えばこんな一節にハッとさせられる。「あなたがたの謝り方はコントにしか見えない」。コントならいいが、逆に相手を怒らせている人もいる。誰にも失敗はある。だから「自分なりの謝罪の仕方を身に付けることが社会人になること」ともいえる。

 演技を学べばビジネスの役に立つ。先ず人を観察する癖がつく。次に演技には正解も既成のマニュアルもないことに気付く。自分流を手縫いでこしらえる決意ができる。

 森田氏はいう。「人生は、困ったときにこうすれば上手くいったという、自分で冷や汗をかきながら掴んだマニュアルの集積」

 頭ではなく、身体で考えた人の言葉である。どの会社にも、パソコンの前で頭と手しか使わずに一日を終えている人がいる。いくらネット社会が便利でも、全身を使って伝える癖を付けようよ。