教訓 売れる理由を考えよ(2007年9月)
私は売れる物は基本的に試すことにしている。雑誌や本は読んでみるし、機械製品なら使ってみるし、食品なら食べてみる。
売れるものには必ず売れる理由がある。自分で試してみると、それを作った人の創意工夫に出会える。一過的に売れるものにはそれなりの、ロングセラーになるには、それに相応しい知恵がぎっしり詰まっている。(もちろん売れないものの中にも良いものはたくさんある。)
PHP研究所編『常に時流に先んずべし トヨタ経営語録』(PHP研究所)を読むと、トヨタが何故売れる車を作り続けられるかがよくわかる。同書には、歴代11人の社長の言葉から212節をピックアップし、収めてある。
どの社長も仕事の現場で血の滲むような体験をし、そこから自分流の経営哲学を発酵させていることがわかる。
「舞の本質は、動作と動作の『間』すなわち『あそび』であるという。人間の働きは、舞であれ仕事であれ、この『間=あそび』をギリギリまで追求するところに完成があるのではなかろうか」(大野耐一)
「何かをするときは『命を懸けろ』といっています。(中略)あの人の意見を聞き、この人の意見を聞きとやっていたら、角がとれていく。角を取ってはダメなんです」(渡辺捷昭)
「一個人の不注意を以って、全工場の努力を空しうす、一本のピンも其の働は国家に繋がる、各自の業務に無駄あるべからず」(豊田喜一郎)
「私のもとに上がってくる報告に、『おかしいんじゃないか』というものがあります。『本当にみてきたのか』と確認すると、見ていないものが多い。こうした底の浅いものの見方や、伝聞に基づいた報告は必ずバレてしまう」(張富士夫)
「豊田佐吉の時代から『自分で苦労してやらなければ技術は身につかない』というプリンシプルがある」(豊田英二)
ちなみにいっとう最初に取り上げられている言葉は「当たり前が大切」(石田退三)である。編者は信用できる。