教訓 仲間意識を高めよ(2008年1月)


 日経ビジネス編『人材空洞化を超える』(日本経済新聞出版社)は、人材問題に的を絞ったレポートである。帯にはこんなコピーが記されている。「『仮面職場』と『抜け殻社員』を再生する!」

 仮面職場とは――。若手社員は「物分りがいい部下」を演じながら、転職のチャンスをうかがっている。上司は若手の仮面を知りつつ、問題の根本から目を背け、表面上の連絡業務や会話だけで、日々をやり過ごす。

 抜け殻社員とは――。企業の中核になる仕事を、派遣や外注に頼った状態。切りたいときに人が切れる会社は、人材を育てる労を厭い始める。

 それ以外にも、セキュリティシステムが導入され、“囚人”のような息苦しさの中で消耗する社員。法令順守を重んじるあまり、事なかれ主義が蔓延する会社……。

  これでは人材は育たない。

 もちろん、人材の育成に成功している会社の実例も紹介されている。ワタミの社長、渡邉美樹氏は「提携して中国で和民を広めたい」というディレク・リウ氏にこういった。「決意は口で言うだけでなく、心の底から決めないと、ちょっとしたことで挫折してしまうものだよ」。厳しい研修を乗り越えたディレク氏にゴーサインを出すと、三ヶ月間行動を共にした。そして、徹底した顧客志向を植えつけた。

 オービックの常務、橘昇一氏は毎日200名の社員に声を掛け、本音で話す。キリンファーマの社長、浅野克彦氏は一体感を失いかけた組織にやる気を引き出すために、理念作りのプロジェクトチームを作る。さらに自らの「本気度」を社員に伝える。JR西日本のみやこ列車区区長、林秀樹氏は「井戸端会」を開き「ぶっちゃけ話、しようじゃないか」と部下の声を聞く。

 彼らは指示をメールで送るだけではない。言葉ではなく態度で示す。困難を恐れない。縄張りを果敢に出て行く。そして「この人と一緒に働きたい」と思わせる。

 と、ここまで書いて思い出した。「カンパニー」には「仲間」という意味もあったということを。