教訓 他者を通して自己を対象化せよ(2009年6月)


 数年前、斎藤孝氏が提唱する三色ボールペン活用法を試したことがある。本を読んで、大事だと思うところは赤、やや大事なところは青、自分が個人的に面白いと思ったところはみどりの線を引くという勉強法である。 

 ほう、こんな考え方もあるのか、と自分でもやってみた。だが一ヶ月を持たず自分流の鉛筆1本方式に戻ってしまった。私の場合色分けはしないが、数種類のマークがあってそれで識別できるようになっている。三色ボールペンは私にはちょっと煩わしい感じがした。

 それでも斎藤方式に出会ってよかった。自分のスタイルを対象化する目を持ち、実際に手を動かして他人の思考法をなぞったことで多くの気付きを得た。

 年をとるほどに、人は仕事のやり方でも勉強の方法でも固定化するものだ。そんなわけで、たまに勉強法に関する本を読むことにしている。鎌田浩毅『一生モノの勉強法』(東洋経済新報社、1,500円)は、こんなに自分と似た勉強法の人がいたのか、と驚いた本である。鎌田氏は火山学者で、私は演劇人と全くフィールドが異なるのに。

 鎌田氏も本に書き込む筆記具は一色らしい。

 共通点をいくつか引く。

「最初のハードルは出来るだけ低く設定」「自分のゴールデンタイムは絶対死守する」「就寝時間をすぎて勉強してはいけない」本当に集中するなら1時間が限界」「スランプがきたら抵抗するな」....。あげたらきりがない。

 強いていえば異なるのは一つだけ。「飲み会に2時間以上いてはいけない」。私の場合役者さんとずぶずぶになるまで飲んで、腹を割って語ることで、舞台創りの困難を突破できることがあるから、これはやめられない。

 「見ず知らずの人を師匠にする」「『ああなりたい』という人を持つ」という考えも同感だ。これを学ぶなら、谷沢永一『危機を好機にかえた名経営者の言葉』(PHP研究所、950円)がもってこいだ。