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江戸末期――。田中儀右衛門は、十代前半で既に地元・久留米で「からくり師」として注目を集めていた。彼が、久留米がすりの創始者・井上伝の求めに応じ、花や蝶などの洒落た柄を織り込む技法を開発し、地元産業の発展に貢献したのが十五歳のときだった。発明の面白さに魅了された儀右衛門は、からくり人形を見せる見世物小屋の興行師として大阪で活躍する。
その後、大塩平八郎と出会い、〈仕事の使命〉に開眼する儀右衛門。だが、その出会いは儀右衛門の運命を大きく変えていく…。佐賀藩、久留米藩に戻り、蒸気機関、アームストロング砲などの開発に携わり、技術で明治維新に貢献する。明治以降は政府の要請に応え、西洋技術の国産化を推進し、東芝の前身をつくるに至る、田中儀右衛門の生き様を描く。
作品は実話を基にしたフィクションです。